株式会社島精機製作所 インタビュー

(株)島精機製作所 生産本部 の皆様

では、まず簡単に事業の説明をお願いできますか。


当社はコンピューター横編機、デザインシステム機器、自動裁断機、手袋・靴下編機を主力製品とする中、自動機や管理ソフトウェアの販売など新たな事業にも取り組んでいます。横編機メーカーとしては世界トップクラスのシェアを誇り、世界基準の開発力を誇る企業であるとともに、高い内製化率による加工技術や組み立て技術に定評があり、当社の強みとなっています。

特色などお伺いできますか。


コンピューター横編機が主力製品となっています。コンピューター横編機はニットウェアなどに広く活用され、衣食住の衣の分野でお客様に寄り添った形で提供をおこなっています。

なぜこのDXプログラムの参加を決められたのか、お話しいただけますか。


当社はデジタル技術の採用には積極的に取り組んでおり、自社開発も進めています。しかし、データの効果的な活用や変革への踏み込みが難しく、DXの定義についても認識の一致が難しい状況です。デジタル技術は取り入れているものの、まだ”X”の部分には進展が見られませんでした。そこでDX意識向上や若年層のデジタル技術に精通する人材育成の機会を逃したくないと考え、今回プログラムへの応募に至りました。

プログラムに参加される前に感じられていたことをお伺いできますか。


DXの定義は曖昧で、DXがすべてを包括するわけではなく、その定義は人によって異なると感じていました。例えばペーパーレスなどは既に社内で取り組んでおりましたが、現在進行中のプロジェクトをさらに向上させるためにも、新たな知識やアイデアを得ることが重要でありプログラムへ参加することが有意義なものになると考えていました。

(株)島精機製作所 生産本部 橋本健氏

既におこなっていたデジタル化は主に弊社の異なる部署からの自動機やシステムの製作依頼に応じ、それを製作して納品するプロセスでした。しかしながら、これは比較的狭い分野に焦点を当てた作業であり、一工程に特化した形となっていました。最近DXの概念が浸透する中、より広い視野で企業全体の流れを改善しなければならないと感じていました。

現在プログラムの中だと中間地点をえたあたりですが、既にその中で変化などは生まれていますでしょうか。


我々も含め、元々DXに携わっていたメンバーは、デジタル技術やDXについてはそれほど違和感を感じていなかったものの、他のメンバーにとっては新しい言葉や概念であったようです。これまでデジタルに踏み込んでいなかったメンバーもおり、そんな人たちのDXに関する意識も大きく変化していると感じます。

当初のミーティングでは、進捗に関する議論が難しく、メンバーからの提言が少なかったです。しかし、最近では月1回から2回の頻度でおこなわれるミーティングでは変化が生まれています。例えば、展示会へ参加し、YouTubeやeラーニングでの情報収集などを通じてDXに関する理解が深まりつつあり、メンバー間のコミュニケーションが増えてきているというような状況です。

このように自分から「こういうものがありましたよ」という発言が生まれてきているというのは大きな進歩だと考えています。知識は後からでも身につきますが、そういった自ら関わろうという意識がなければ物事は何も進まないですし、まずは環境作りが上手くいっていることに感激しています。

今回のプログラムを開始してからDX推進する上で直面した課題があればお伺いできますか。


現在DXの一環として、工場作業のロボット化に取り組んでいます。特定の用途に特化した機器はいくつかありますが、多品種少量の取り扱いにおいて、形状が異なる部品や、複雑に絡み合っている部品を個別でピッキングするという課題は解決できていません。

(株)島精機製作所 生産本部 泊宗希氏

まだ解決には至っていない段階ではありますが、小さな成功事例を作るためには、まず部品を絞り込むというアプローチを取っています。費用対効果や稼働時間などを考慮し、一つひとつ課題を浮き彫りにしていく事で、少しずつですが確実に前に進めるという事を意識して取り組んでいます。

そんな課題を踏まえまして、現状どんな成果がありますか。


成果は全てですね。先ほどお話ししたような課題に直面していること自体が既に成果だと考えています。過去にはどのような課題があるのかが見えていなかったのですが、これまでの成果があったからこそこれらの大きな課題に取り組むことが可能になりました。これはチーム全体にとって、そして当社にとっても非常に重要な成果だと感じています。

(株)島精機製作所 生産本部 橋本健氏(左) 泊宗希氏(右)

課題の表面化が進む中で、皆さんが課題に気づけるようになったことも成果の一環です。最終的な完成に至っていなくとも、既に考え方や感じ方が進化していると感じています。このような変化は、今までの取り組みがもたらしたものであり、これからの発展にも期待を寄せています。

また、大学との連携活用も話題に上がっています。DXチャレンジを始めた当初から、dToshさんや和歌山大学との連携が築かれており、特に和歌山大学では産業用ロボットのハンドの設定において研究が進んでいます。その中で研究者の方と知見を共有し合い、新しい技術やデータに触れ、自分たちがこれまで経験してこなかった事を学ぶことができています。これらの産官学に及ぶ情報共有は初めてのことで、非常に有益なものとなっています。

プログラムを踏まえて蓄えられたノウハウ、またはスキルセットなどはありますか。


私は技術的な成果よりも、意識の変化に注目しています。自分だけでなく、職場の方々もこのプロジェクトを共有しており、社内で自動機を使用しているところを一緒に見学する機会や、関連するセミナーの紹介などがおこなわれ、周囲からのサポートも増えています。このような状況で、周りのメンバーが情報を共有してくれるおかげで、さまざまな知識が増え、スキルアップに繋がっていると感じています。教育的な要素も土台が整いつつあり、今まで踏み込めなかった部分においても学びやすくなっていると思います。

(株)島精機製作所 生産本部 髙橋由芽香氏(右)

新たな知識や情報を頭に取り込むことは、技術の発展に不可欠であり、スキルの向上に直結していると考えています。

また、ビジネス的な視点で考えること自体が新鮮で、DXのチャレンジやピッキングに関しては初めは他社の事例を調査しました。その中で、他社がピッキングシステムを使った自動化の立ち上げを行っている事例をタイムリーに目にし、ビジネスの需要が高まっていることを実感しました。その中で他社の事例を参考にしながらも、自らができる独自のアプローチを見つけるよう取り組んでいます。例えば、弊社では電子秤で重さを量り、個数を出す作業をロボットに担わせるアイデアが浮かびました。こうして周りの会社を観察しながらアプローチをおこなうことで全く新しいソリューションの提案をしていければと思っています。

最後にこれからDX促進に踏み出される企業に対してかメッセージを頂けますか。


一般的に、急にDXを始めるとなると、現場での変化に対する抵抗が生まれやすいんじゃないかと思います。このような状況では、構図が敵対的になりがちなので、DXを推進する上で全員が理解・納得して参加してもらえる方法を見つけることが大切だと思います。

知識はなくても全然良いと思っていて、まずはDXに対する意識というのをどう持ってもらうかという点の模索が最初に必要だと思います。例えば、ある会社でDXをやりましょうという話になって、一人ひとりが他人事で「DXやってるんだな」というような意識では間違いなく前に進まないと思います。そのDXという中で自分のできることは何なのかというところ、それがどれだけ小さくても自分のできることが何なのかということを考えついて行動したときに初めて規模が大きくなってくると思うので、その意識というのをいかに持ってもらって皆さんが自分ごととして考えられるようにしていくかが一番の近道になると思います。

(株)島精機製作所 生産本部の皆様